蜜愛05 焦想

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 聡子は、その場で自分の職場の社長に連絡を入れた。 「あ、社長。お疲れ様です。今いいですか?」 "…" 「あの、前に従業員募集の件、言ってましたよね?あれ、まだ有効ですか?」 "…" 「あ、良かった。実は、一人紹介したい人がいるんです」 "…" 「はい。私と同期で、実力は私以上です。それは保証します」 "…!!!"  何だか向こう側が、急に騒がしくなってくる。 「今ですか?はい、一緒にいます。…は?…え、っと、ちょっと待って下さい」 "…!!!、…、…!!!"  聡子が和真に向き直って、苦笑いしながら詳細を伝えてきた。 「えっと、和真。社長が今から来るって。いい?」 「………は?」 「私以上の実力なら、即戦力だから是非欲しいって」 「……使って頂けるなら願っても無い。お願いしてほしい」  和真の返答を聡子が伝えると、  本当に今からやって来るということで、二人は店で待つことになった。 □◆□◆□◆□  社長を待つ間、聡子は訥々と和真を説得する。 「和真、私のことは抜きにして考えてね?今から来られる社長の会社は、本当にいい会社なの。社員のモチベーションも高いし、なにより働きやすい。そして、とても勉強になる。私、大学入ってすぐにここにバイトに入ったんだけど、今日まで本当に勉強になることばかりなの」 「そうなんだ。俺、バイト先で見かけるだけだけど、従業員さんとの関係も、良好な会社なんだなと思ってた」 「うん。本当にその通りで、私が起業を目指してるって言うと、その情報を出し惜しみしないの。技術も会社の運営方法も、何もかも晒してもらった。私は卒業したら、そのまま社員になる予定」 「そうか」 「和真、後を継ぐにも、技術を磨くにも、社長の会社はぴったりだと思う。だから、よく考えて?」 「分かった、ありがとう。お前、いい奴だな。高飛車かと思ったけど、ただのガテン系だったし」 「どっちも不本意な称号なんですけど?まぁ、家柄が家柄だからね。高飛車ってよく言われる。でも、私も両親も、すごく質素よ?」 「お前、この前何でも買ってやるとか言ってただろ?」 「あれは…。でも、買ってやれる財力はあるんだよ?それも、親のお金じゃないよ?自分のお金だからね?」 「クク、必死だな?」 「もう必死必死。和真、私はあなたが思ってるより一途だし、誠実だよ?努力するし、家事も一通りギリギリ熟せるし。揉まれてるよ?」 「そうか、頑張れ」 「うん、頑張るよ。私は和真の隣を諦めないから!! 私は雑草根性の持ち主だからね!?」 「………俺のことを、諦めろ」  聡子の押しに、少し腰が引けてる和真だった。
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