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「作家の、北野(きたの)可奈(かな)?」  どこかで聞いたような気がする、そう思いながら僕は首を傾げた。そうだよ、と友人は当然のように頷いた。 「もしかして(たき)、知らねえの、今すげえ話題だけど?」  そう言われれば、テレビかなにかでその名前を聞いたかもしれない。 「お疲れ〜、なになに、なんの話?」  学校の外階段付近に設置された、テーブル付きのベンチで話していた。昼ごはんに食べたパンやおにぎりの包みを片づけていると、クラスの女子二人が爛々とした瞳で近づいてくる。  そばに植わった木々が葉を揺らし、ちらちらと陽光を落とした。十月上旬の、秋らしい風が頬をなでる。  友人が挨拶を交わし、それまで手にしていた本を片手に、さっきの話を彼女たちにも披露した。 「あーっ、知ってる知ってる! 北野可奈! 前作もすごい良かったよね、愛情がテーマのほら、あれ。林檎の……」 「ああ、『赤い林檎の木』な?」
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