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気になる日下部さん
俺は今、気になっている女の子がいる。
日下部凛花さん。
その名前を心の中で唱えるだけで、胸がドキドキする。
こんなこと、初めてだった。
なんか悔しくなるくらい、俺は日下部さんに惚れていた。
…とはいえ、日下部さんとはまだまともに喋ったこともない。
…喋りかけられない。
日下部さんは、大人びている。
学級委員長ということもあって、いつもみんなに頼られている。
黒髪ロングヘア、真面目な黒縁メガネ。クラスの半分以上の女子生徒がセーラー服を着崩したりする中、彼女はありのままのセーラー服を真面目に着ていた。
彼女は変わり者だ。
周りの女子が好きなキラキラしたメイクにも、女子が必死になってチェックしている流行りのファッションにもびっくりするほど無関心で、ただ永遠と文庫本を開いている。
だからかなのか、彼女は浮いている。
別にいじめられているとか、極端に無視されているとかではない。
周りは彼女を、『学級委員長』としか見ていない。
だから彼女を「日下部さん」とか、ましてや「凛花ちゃん」なんて呼ぶ人はいない。
…俺以外は。
でもやっぱりドキドキする…
そんな気持ちで日々、ドギマギしながら、
「日下部さん」
その名前を呼んでいる俺。
「どうしたの、桜庭北斗くん」
日下部さんはクールな表情で俺の名前を呼んだ。
…日下部さんが俺の名前を呼んだっ!
「いや…その、教科書貸してくれない?」
俺は咄嗟に言った。
「いいけど。はい」
日下部さんは俺に教科書を差し出した。
教科書が日下部さんの手から俺の手に移される時。
少し、ほんの少しだけど…
日下部さんの手が、僕の指に触れた。
「………っ!」
「どうかした?」
慌てて首を振る。
彼女にとってはなんの気も無しな行動なのかもしれない。
でも、俺は日下部さんの何気ない行動にいちいち心臓が爆発しそうなくらいドキドキしていた。
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