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【4月20日13時】
某県T駅のタクシー乗り場には、今日も栄行タクシーの乗務員が何人か集まり輪になってガヤガヤ話していた。
集まっているのは真田班長、入社して2週間程になる新人の一條、丸型の黒いサングラスを掛けた花沢、運転手の癖に栄行タクシー乗務員の制服も着ずに自前の僧侶服を着ている丹波、茶髪に大きいバックルのベルトを着けた栄行タクシー最年少の西村の5人だ。
現在先頭車両として待機しているのは真田班長の車だ。その後ろに花沢、続いて一條と車が並べて停められてある。
一條が皆に詰め寄る。
「じゃあここのタクシー運転手の中で、一番給料を貰ってる人は誰なんですか?」
タクシー乗務員の給料は一般的にほぼ歩合給のため、新人としてこれからタクシー乗務員を続けるつもりの一條にとっては気になる質問だ。
「……………」
皆が様子見しながら黙った所を、最初に西村が口を開く。
「僕は先月の給料は65万でしたよ」
「なにっ?!?!」
皆が驚く。
その後で丹波は、
「そんなに給料貰ってる人この会社に居たんだ?」
と呟くと、花沢は西村を見て悔しそうに
「お前……そんなに貰ってたんだな!よくX(元Twitter)で見掛ける東京のタクシー会社の給料みたいじゃねーか」と続けた。
西村は誇らし気な顔で、「まぁ、この仕事は実力勝負の世界ですから!」と勝ち誇る。そして、
「けど班長、班長だって班長手当てあるだろうし相当貰ってそうですよね?」と真田の顔を見て尋ねる。
真田は、「バカっ!班長手当てなんてうちは1万くらいだぞ。たったの1万でな、俺はお前らみたいなダメ運転手の面倒見てんだぞ!」と騒ぎ立てる。
そしてそのまま、「ここで一番給料を貰ってるのは西村、お前だ。そしてこの会社で一番給料が少ないのは……」
と言って丹波の顔を見る。
丹波は「(わかったから皆の前では言わないで!)」
と、祈るような顔で真田を見ていたが容赦なく
「丹波。お前とここには居ない本村の2人がぶっちぎりで最下位だ」とキッパリ言った。
「まぁそこは妥当だろう」花沢が言うと皆が頷く。
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