125人が本棚に入れています
本棚に追加
/78ページ
初雪が私達に舞い降りて――――――
誕生日に願いがひとつ叶った。
ナツユキカズラが花言葉の通りに夏樹さんの誕生日に舞ったように。本物の初雪も訪れてくれたなら……それもまた奇跡だと密かに願っていた。
初めてはぜんぶ夏樹さんと一緒に。そうしてたくさんの体験が実って、二人の絆が強くなったらいい。
その時きっと私は、夏樹さんをもっと大切に想うのだろう。好きでいっぱいになるのだろう。
そして……
天から初雪の贈り物が届いて――――――私の好きが溢れた。キスはその証明だった。
「――――今日は雪乃さんの誕生日なのに、俺がプレゼント貰ったみたい」
「何を?」
「雪乃さんからのキス、初めてなんだよ? チュッ……」
「んっ、それプレゼントなの?」
初雪が降るほど寒かった外から夏樹さんの家に帰り、お風呂やワインで冷えた体を温めて。それでも一番暖かいのはお互いの肌を重ねたときだから……
ベッドに早く入りたいと二人で望んだ。
「だって凄く嬉しいんだ……チュッ」
「……夏樹さんの誕生日に私も同じようなこと言ったかも?」
夏雪の花の待受画像を夏樹さんが私にくれた時を思い出した。二人のスマホはそれからずっとお揃いの画面で。あの時もベッドの上でこんなふうに素肌で触れあった。
「俺たち似た者同士かな?」
「そうね」
「じゃあ、こうすると気持ちいい、ね?」
「うん、気持ちいい……」
夏樹さんと交わすキスは、特別に心が潤い安心で満たされる。なぜか……?
溢れるほどの好きを伝えたい、だから、キスしたい――――――
夏樹さんの本心を汲み取って、私もそれが理解できて。キスがいつもより幸せに感じてとても……気持ちいい。
恋人になってから今までの性行為に、一度も痛みなど感じたことはない。夏樹さんが優しく抱いてくれるから、私はオーガズムを感じることもできた。
その瞬間、快感だけが体中をはしり意識まで支配するから……快楽の海に溺れそうになってしまう。
性の悦びは、歓喜だけの感覚ではなくて。どこか、ほんの少し、恐れも抱くのだと知った。
でも、いつも。
私の意識を救ってくれるのは……
夏樹さんの温かい手であって、優しい声であって、分け与えられるキスの息で。
微笑んだ視線の中、目覚めるときが……
切なく愛おしいほどに幸せだった。
それだけじゃなく。
オーガズムが重要だと思いこんでいた私の考えも変わった。ただ繋がっているだけでも幸福感で満たされる。キモチイイ……
そのことを夏樹さんが教えてくれた。
もう裸のままベッドで眠るのも、ベッドの上で目を覚ますことも、怖くはない。
最初のコメントを投稿しよう!