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プロローグ 箱舟の男
神の計画による大洪水。
大地を飲み込んだ海に、延々と降り続いた氷のように冷たい雨もようやく止み、箱舟を作った男が船室の扉を開けて、甲板に出た。
空も海も青く澄み、太陽は眩しく輝いていたが、土地は全く見えなかった。
「当分、水は退かなさそうだ」
男は、ポツリとつぶやいた。
その時、船の外、船体の外壁から〟ガリリ、ガリリ〟という不気味な音が聞こえてきた。
音は、どんどん大きくなっていく。
何者かが、船体の外壁をよじ登ってくるようだ。
――そんなはずはない。陸上の生物は、大洪水で全て死に絶えたはず……。
男は船べりに進み、船体を見下ろした。
瞬間、鋭い爪が眼前に迫った。
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