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道の奥の方から、ゆるやかな和楽器の音色と共に、煌びやかな衣装を纏った女性たちが二筋の列となってゆっくりとこちらへとやって来る。
彼女たちは皆、今では見かけなくなって久しい着物を身に纏っていた。
様々な瑠璃色の布地の上に、金や銀の刺繍を中心として描かれた細かな刺繍が際立っている。
皆一様に、艶やかな漆黒の髪と白く塗り込められた肌に鮮やかな紅色の唇をしており、その整った美貌は豪華な行列と相まって、その場に幻想的な風景を描き出していた。
「すげぇな……」
「現代って感じがしねぇもんな。格好とかさ」
人々はこぞって感嘆の声を上げていた。
女性たちの行列が一歩、また一歩と進む度に薄紙で作られた薄橙色の細かな花吹雪が、夜空に向かって撒き散らされ周囲を鮮やかに彩る。
興味本位で身を乗り出した香帆の耳に、再び人々の噂する声が聞こえてきた。
「橙の花吹雪って事は……紅葉楼だよなぁ?」
「でも青色一色の道中って誰だよ?」
「馬鹿! 青って云ったら決まってんだろ。あれは……」
噂話に首を傾げていると、不意にわぁっと歓声が上った。
前に行ってみようとかと思ったものの、余りの人の多さに面倒臭くなって香帆はその場で行列を眺めていた。
しかし、呑気に行列を見ていると突然後ろから強く押された。
「ッ!?」
勢いに押されるまま前へとよろめく香帆。
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