それは批評か、嫌がらせか

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 もし、今嫌がらせをしている作家が消えたとしても、創作の世界にいる限り、妬ましくなる相手はずうっと現れます。妬ましい相手を作品で超えるために、そちらにパワーを全振りすれば、嫌がらせの方法なんか考えてる時間も体力も無いです。Ars longa, vita brevis (芸術は長し、人生は短し)です。  創作や芸術の世界で同業者に嫌がらせをする人って、その世界にきちんと向き合ってないというか、その世界の解明度が低すぎると思うのです。先述した通り、評価に人の好みが反映される業界なので、「私のほうが上手なのに……私のほうが努力してるのに……」と感じることもあるでしょう。しかしそれが気に入らなくて、他人を背中から刺すような真似をするくらいなら、とっとと身を引くべきです。だってここは、そういうどうしょうもなく不公平な世界なのだから。努力なんか報われないんですよ、ここでは。  それで究極、他の人がどんなものを発表するかは、自分の表現には関係無いです。個性が違うし、それを受け入れてくれる人も様々だからです。受け入れてくれる人が多い=一般受けすることを、成功と呼ぶのだとすれば、自分の個性を一般受けに寄せる努力は、報われるかもしれません。  以上、半世紀生きている私の実感を踏まえて。私は割と嫉妬深いですから、若い頃から妬ましい感情に、何かにつけて振り回されてきました。今でも「知ってる作家さんが受賞したと聞いたら、心から祝福します」と100パーセントでは言えません(笑)。そんな私でも、歌も小説も、私はこれでいいという悟りが開けてきました。すると、誰かの幸運もちょっと喜べて、自分の立ち位置や課題もクリアに見えるものです。  歌に関しては、若い頃の練習が、質も量も足りなかったと痛感しています。伸びる人は、きちんと正しく、頭を使って、こつこつと練習しているのです。歌と同じ轍を踏みたくないので、文章はとにかく考えながら毎日書いています。それだけでも、自己満足感が違います! めちゃくちゃやれば、「これだけやって駄目なら仕方ない、あはは」と諦めがつきます(ちょっと負け犬根性が入りますが)。本当に飽きたら、やめればいいだけのことです。  ということで、「他人に嫉妬して馬鹿なことをやらかす前に、まず自分が死ぬほどやろう」と若干昭和チックな教訓を置いておきます。ご清聴ありがとうございました(一礼)。
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