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「それにしても友奈ちゃん垢ぬけたっていうか、綺麗になったよね。前はキジムナーみたいな見た目だったのに」
「清愁さんヒドイ。いやその通りだったんだけど」
「っていうかキジムナー通じるの凄いな」
最近都君の色気がやばいの! 助けて師匠! と泣きついた先はお寺の住職、清愁さん。心を落ち着けたいなら写経しなさいと写経セットを手渡された。容赦なく有料だったけど。
「なんだろうなあ。ビビッときたわけよ。あの氷のように冷たい目に」
「え、ドM? 痛めつけて欲しいならおじさん頑張っちゃうよ? 割とガチで」
「違う違う。やめて私の五体がバラバラになっちゃう。そうじゃなくて。冷めた目の中にさ。なんかこう、闘志みたいのを感じて」
「あちゃー。格闘家目線だったか」
「いやでも好きなわけよ! 手つないだこともないけど!」
「君たち本当に付き合ってるの?」
こりゃまだペットかなあ、と呆れる清愁さんに反論できない。確かに、ポジションは鷹匠の鷹かもしれないと思っている。
「いやあ。都君って寒がりだから露出少ない服なんですわ。そしたらこの間カフェが暖房効きすぎて暑かったみたいで。上着脱いだら鎖骨ちらっと見えたわけよ。やばかったね、もう色気が。店員さんがめちゃ嬉しそうな顔でじろじろ見るから睨みつけてやったら、当たり前だけど都君に見られて。『どうした、ウサミちゃんみたいな顔して』って言われた。痛恨のミスだよね」
「おじさん的には彼がウサミちゃん知ってるの結構衝撃なんだけど」
ピコン、と通知が鳴った。きゃー、と勢いよくアプリを開くが。
「え……け、研究開発が海外に移転? 二か月後にアメリカ行く? 大学は中退、向こうの企業に就職するつもり……。嘘」
「ありゃ、修羅場かな?」
速攻電話をする。離ればなれなど耐えられない、遠距離恋愛無理!
「もしもし、都君! 私も行くよ!」
『アホか。やりたいことあるから大学入ったんだろ。男のために目的なく渡米すんのか』
「ごもっとも」
『学費出したの親だろ。なんて説明すんだよ』
「至極正論です……」
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