人が消える廃村

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俺は茜の手をギュッと握り、前だけを見て必死に走る。 天井や壁が崩れ落ちてくる。 早く出ないと、小学校が崩壊する。 「勇気、壁が……」 「茜、前だけ見て走るんだ!」 恐怖で立ち止まりそうになる茜を必死に励まして、走り続ける。 「もうすぐ玄関だ! がんばれ!」 俺は後ろの人達にも聞こえるように大声を出した。 玄関から校庭に出ると、ホッと息をついた。 「助かったんだよな?」 彩人がハアハアと息を切らしながら聞いてくる。 「ああ。もう大丈夫だ」   俺がそう答えた時、茜が悲鳴をあげた。 「勇気、後ろ!」 後ろを見ると、小学校が音を立てて崩れている。 もしまだ中にいたら、俺達はみんな助からなかった。 崩れていく小学校を見ながら、みんなゾッとした顔をしている。 「ここも危険だよ。みんな、校庭から出るよ」 祖母に言われて、俺達は慌てて校庭から出て廃村の入り口に向かった。 廃村の入り口にはパトカーが5台停まっていて、ちょうど山岡刑事がパトカーから降りるところだった。 「みんな無事でしたか! 良かった!」 山岡刑事は俺と目が合うと、俺達の前まで走ってきた。
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