人が消える廃村

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「すみませんでした」 5人は祖母の怒声にビビったのか、素直に謝罪した。 俺はポケットから携帯を取り出して、山岡刑事に電話をかける。 状況を伝えると、山岡刑事は驚いた声で「わかった。すぐにそこにいくから待っていて欲しい」と言うので、俺は「わかりました」と言って電話を切った。 「皆さん、お腹が空いていますよね。クリームパンを持ってきたので食べて下さい」 茜がクリームパンを配ると、みんなは嬉しそうに受け取って、クリームパンにかぶりついた。 「茜はいつもクリームパンを持っているよな?」 「私、クリームパンが大好きなの。クリームパンを食べると元気が出るんだよね」 茜はニコニコ笑っている。 俺もクリームパンを口に入れる。クリームの甘さが口に広がると、確かに幸せな気持ちになる。 俺達がクリームパンをムシャムシャと食べている時、穴から強い風が吹いてきた。 「危ない! みんな外に出るよ!」 祖母が叫ぶと同時に、俺達は走り出した。 風はゴウゴウと音を立てて、ピアノや机、イスを吹き飛ばしながら、俺達の方に向かってくる。
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