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グラウンドのバイクが不安だとは言ったが、僕はグラウンドを通らない抜け道を知っている。それは正門からコソコソと外に出て、ぐるっと講堂の方へと回るものだ。
先日、不審者がいるとの報告を蔦高の先生から聞き、警備した。その時に知ったものだ。
そいつはこの抜け道を使って高校に侵入していたようで、この抜け道の存在を知っている不良の生徒たちが授業中に抜け出そうとそこを使っていたところに、不審者と鉢合わせ。騒ぎになっていたところを僕が発見し、逮捕。抜け道は塞ぐ予定だったが、まだ予定の段階で手をつけられていなかったので僕が今利用している。
ちなみに生徒たちはこっぴどく叱られたらしい。これは魅鴾ちゃんから聞いたことだ。
「よいしょ、っと……」
緑色のフェンスが丸くカットされている。草に隠れているため、パッと見わからない。不審者が開けたらしく、それを生徒が発見して利用していたようだ。なので大人一人、普通に通り抜けられる。ちりとりが引っかかるか不安だったが、なんとかなった。
「さすがに建物の裏には誰もいませんね……」
チラ、と足元の低い位置にある窓を見てみる。思った通り、刃物を持ったエデンのメンバーが迂回していた。指示を与えられないようにするためか、先生と生徒に分けられている。エデンの一人が先生の首もとにナイフを当てていた。
あれは……魅鴾ちゃんの担任の先生!?女性を人質にするなんて、ひどい奴らだ!
「今助けます……!」
左右を確認し、バイク組に見つからないようにダッシュで講堂の前まで移動して入口に向かい、前の扉と奥の扉の間に滑り込んで聞き耳を立てる。すると、中から言い争いの声が聞こえた。どうやら今始まったようだ。声的に、教頭先生だろう。
「浦野さん!金岩さん!結崎さん!どうしてこんなことをするのですか!!」
「あぁん!?うっせーよ、ババア!俺たちはもう後戻りはできねぇ!ここで全員ブッ殺して、エデンの上層メンバーに加えてもらうんだ!」
ドスのきいた、いかにも不良ですという感じの声だ。反抗期真っ盛りだろう。
……それより、エデンの上層メンバーがとか言っている。もしかするとこの学校のメンバーのみが集まっている、もしくはしたっぱが勝手に行動して騒ぎを起こしているのではないか?まずエデンは実力主義のグループだったのか……。いや、そこは関係無いだろう。
とりあえず、ここは待機して話を聞くしかない。山野くんの爆発を合図に突入することになっている。ここが警察署の近くで、なおかつお弁当作りのタイムロスのおかげで課の人たちが出勤したあとだったのが救いだ。
まず膨れ上がった風船に剣を持って突っ込むなんてことをすれば、人質の先生が殺されかねない。それでも突撃した結果、この生徒がエデンの重要な情報を漏らしてくれるかもしれない。
早く行きたい気持ちもあるけど、やっぱりここは様子見して………………。
「これで本当にあのキモい警察官が来るんだろうな?」
「は?何言ってんだよ。あの店にいたってことは、あそこの警察署のやつに決まってンだろ。それに、あそこが一番でかいところだしな。来なかったらあそこに脅しの一つでも入れてやる」
うわ~……やっぱり昨日の子たちだ……。しかも先輩のこと言ってる……。
「でもさ、知ってるか?」
「なんだよ」
「あそこ、やべー刑事がいるらしいぜ」
「やべーって、どんな?」
「お前知らないのかよ。剣を持った刑事!」
「あー、この前来てた警察か!俺さ、あいつのせいで先公にスゲー怒られたんだぜ」
あの人質取ってる体格のいい生徒、抜け出そうとした不良だったのか……。……って、僕、そんな「やべー刑事」なの?
「あいつ、また会ったらボッコボコにしてやる」
「おうおう、そーしとけ!」
……モップをぎゅっ、と握り締める。向かってくるなら倒すのみだ。エデンに所属しているということだけで犯罪者のようなものだが、まだ高校生だ。いくらでもやり直せる……はず。そのあたりは僕の仕事ではない。僕たち『特別能力推攻課』は、特殊すぎるだけの『機動部隊』だからだ。
「くろちー……」
「大丈夫、きっと来るよ!だって、魅鴾の運命のナイト様でしょ?」
「うん……」
魅鴾ちゃんの姿も確認できた。
「よかっ────」
──ドーーン!!
「!?」
ホッとした直後、後ろから爆発音が聞こえた。山野くんが来てくれた!
「行ってください、黒池先輩!」
「谷口くん!」
いつの間にか透明人間……谷口くんが隣にいた。姿は見えないが、声でわかる!
「キャアアアアア!!!」
中にいる学校の人たちが悲鳴を上げる。爆発音のせいなのか、不良たちが何かをしたのか。僕は急いで扉を開き、モップを構えた。
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