第3話

3/25
980人が本棚に入れています
本棚に追加
/181ページ
「いい加減、ご実家に帰ったらいかが? どうせ、ラインヴァルト殿下の婚約者になるのはこの私なのだから」  彼女が自身の胸に手を当てて、微笑みつつそう告げる。  その姿を見ても、心はざわつかない。それもこれも、全てラインヴァルトさまのおかげだ。 「……なに、笑ってるのよ」  そう思っていると、彼女が眉間にしわを寄せてそう問いかけてくる。……笑っているつもりは、なかった。  彼女の言葉に驚いて、唇の端に指を押し当ててみる。……口角が、少しだけ上がっているような気も、する。 (けど、別に笑っているというレベルではないわ)  でも、笑っている、笑っていないの判断は個人によるものだ。だから、コルネリアさまにそう見えてもおかしくはない。 「笑っているつもりは、ありません」  けれど、否定しなくちゃ。だって、私は彼女を不快にしたいわけではないのだ。  ……私はただ、彼女と向き合いたいのだ。それだけ。 「嘘言わないで! あなた、私のことを嘲笑っているんでしょ!?」 「……え」  しかし、続けられた彼女の言葉に驚く。  自然と目を瞬かせていれば、コルネリアさまは強く唇をかみしめる。  ひどい悪意を宿した目で、私を見つめる。 「次期王太子妃として期待されてきたのに、あんたみたいなぽっと出の女に立場を、殿下の寵愛を奪われそうになっている」 「あ、あの」 「きっと、あなたからすれば私は嘲笑い見下す対象なのでしょうね!」  なんだか、普段の彼女と少し違うような気がした。
/181ページ

最初のコメントを投稿しよう!