天下一忍者大戦

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この忍者の里では4年に一度、甲賀、伊賀、風魔、雑賀、4つのクラン(里)の頂点を決める武闘大会が行われる。戦いは3対3のチーム戦、勝負は一人ずつ勝ち抜きで進んでいく。この大会は全国各地の有力な大名が招かれて観戦し、今後の諜報や軍事で雇う忍者の品定めをしていく。 「にんにん、あなたの家の屋根裏に。クリプト忍者咲耶参上!」 自撮り棒の先のスマホ画面に笑顔を見せるのは甲賀のクラン(里)の咲耶。ポニーテールにつぶらな瞳、一見小学生でも通るような幼さなさを残した女子高生忍者。そして、忍者としては致命的ともいえる性格上の欠陥、「目立ちたがり屋」。そのため、忍ぶことの出来ないピンクの忍び装束にYouTuberの活動で、そこそこの知名度を得ていた。 「今日はねー、なんと、ここ武闘大会抽選会場に来ちゃってます。」 パフパフーと手持ちのラッパで盛り上げる。緊張感漂う中でたった一人でべらべらと動画を撮影しながら喋る咲夜は異常で、あからさまに睨みつける者もいるが、多くは関わりたくないといった様子で逃げていく。 「あ、ネムちゃーん。ネムちゃんは私の親友なの。めっちゃ強いんだよー。」 同じクラン(里)で同級生のネムを見付けると、自撮り棒で慎重に自分を映しながら走って近付いた。 「空気読んで。こんなとこで迷惑だから。マジ、友達と思われたくないから。あ、それから、動画上げるときは顔モザイクにしてよね。」 「優勝候補の雑賀とだけはやりたくないなぁ」 雑賀は全国にその名の知れ渡った傭兵集団。主に諜報活動よりも戦闘に長けていて、まさに戦闘民族。雇い賃が高いことでも知られている。 すでに、雑賀と甲賀の抽選が終わっていて、その2つのクランは別の山にいた。 咲耶がカードを引くと、 「ありゃ?」 雑賀とだった。 大会の日がやってきた。先鋒はネム、中堅が咲夜、大将がシャオランだった。シャオランは一つ年上の女子高生で、強いと評判なのだが戦う姿を見たことがない。極度の臆病で、戦いは口寄せで呼び出したパンダのりんりんが担当している。 両者前へ。ネムは筆と紙を取り出す。これがネムの戦闘スタイル。雑賀の先鋒は、長身のメガネをかけたインテリ系の男。スナイドル銃を肩に掛けていた。 勝負始め ネムはさらさらと筆を滑らすとさらりと描き終え、その絵を真っ直ぐに突き進んでくるインテリに向けた。インテリは明らかに不満そうな態度。相手に不足があり過ぎる、そういう表情をしていた。 突き出したネムの絵が風もないのに揺れる。と、そこから龍が現れた。それも頭だけでネムの身体を上回る大きさ。 (なんと、) インテリはとっさに構えたスナイドル銃もろともあっという間に飲み込まれていた。一瞬の出来事、静まり返る会場。 「いいよ、りゅーちゃん、出してあげて」 ネムの言葉に龍は目をぎょろりと動かし、喉を鳴らしてインテリを吐き出した。 勝負あり。 雑賀の2人目の男はさすがに緊張感を漂わせていた。しかし、臆する気配はない。 勝負始め。 (先手必勝) 男は無数の手裏剣を投げつけ、絵を描く隙を与えない。投げつつもじりじりと距離を詰める。 「むむー」 ネムは手裏剣を防ぐのに両手が塞がれて絵を描けない。男はしめたと懐に入り込む、そこにネムの筆が袈裟斬りの形で男の装束に墨を付けた。一瞬構えてしまった男だったが、それがただの筆であることに気付くと、 (バカが) 脇差しを抜いた。 どんー 脇差しを抜いた男が地面に叩きつけられた。 「僕の墨は重さ。その墨の量であれば30キロはあるだろうね。」 勝負あり。 3人目の男はニヤニヤと笑って現れた。恐れはない。 「強いのは分かったが、手の内は見えた」 「俺は奴ら中忍とは違うぞ」 男は印を結ぶと口寄せの術で狼を呼び出した。その数、ざっと100。 「数で圧倒よ。俺の必勝パターン。何も出来ん。」 周りを無数の狼に囲まれているネムだが、見えていないのかさらさらと絵を描き続けている。 狼は唸りながら距離を詰める。 「襲え!」 「できた・・・」 描き上げた絵を高々と上げる。出来に満足しているのか、ネムの口元が緩む。 「超無敵ハイパーロボデラッ、」 言い終える前に狼が目の前に。 その瞬間、地面から這い出るように現れた巨大ロボは会場の天井をぶち破る。天井付近のロボの肩に乗っているマオは命じる。 「艦砲射撃用意。全弾狙い定めー、打てー」 まるで、象と蟻。呆然とする狼たちを一人残らず打ち抜き、男の身体にも無数の弾が当たる。 勝負あり。 ちなみに弾はスポンジ、男は呆然と立ち尽くしていた。 ネムの三人抜き。甲賀、決勝進出。
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