#8 モラハラ男を排除します

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私の視線に気づいたのか華麗なウィンクを残して去っていく、おまけは黙っておけということかな。 「でもさあ、影山さんとなら全然アリだよねえ。かっこいいし繁盛店の経営者だしぃ」 「本当ですよね」 本当です、でも影山さんは忘れられない人がいるから、この先ずっと独身を通すのだろうか。 「結婚式には呼んでね」 畑さんがにこにこと言う。 「はい、お呼びしますけど、当面恋なんてしないなんて」 言わないよ、絶対―、じゃなくて。 「予定はないですよ、全然」 「えー、影山さんとデキたんじゃないの?」 「できてませんよっ」 「えーだってなんか『伝言いい?』とか言って秘密の会話してたしぃ」 「それはっ、ご迷惑をおかけしているだけでっ」 うんうん、そうそう、まさにカラスに襲われた子猫を拾ったようなもの! 「えー、じゃあ私が狙ってもいい? 覚えてもらってるみたいだし、これから毎日ここに通って」 「あ、それは無理だと思います」 思わず言ってしまった、リズや指輪の存在を思い出してだけれど、それを私が言えるはずもない。 「なんでよぉ、やきもちー?」 「そんなんじゃなくてっ、影山さんはその、大切な人がいるそうですっ」 もうこの世にはいない、だからこそ影山さんの心の奥深くに住んでいる女性。私たちが敵うはずもない相手だ。 私の言葉は隣の席の女性たちにも聞こえていたのか、視線を感じてそちらを見れば、皆揃って顔を背けてひそひそと話を始める。 余計なことを言ってしまったかしら……それだけに影山さんがどれだけモテるかが判ってしまった。色男は罪な存在だ。
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