#1 クズな恋人

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言われてまたため息が出てしまう。 こんなやりとりは初めてではない、同居した時からだ。 ううん、実際には同居を始めた頃は「間借りしてるから」と言ってせっせと掃除や食事作りをしてくれた。そもそも同居だって転がり込んできたのだ、一緒に住もうとか甘い誘いがあったわけではない、何度かエッチをうちでした後、鍵をくれと言い出し、そして自宅に帰らなくなった。私が「家、帰らなくていいの?」と聞いていた頃は家事を率先してやっていてくれたような気がする。周がいることに私が慣れてきたころから、彼はまるで王のようにふるまうようになった。 私に対する態度もそう。交際当初はかわいい、大好きと言って私を甘やかしてくれていたのに、最近は馬鹿だブスだと私の否定するようなことしか言わない。 これはモラハラとかいうのでは、と頭では判っているんだけれど、私は真面目に家に帰ってきていた。ここが私の家だという意識のせいだろう、出て行くのは周だ、何度か家に帰るよう進言したことはある。でも無視するか、怒鳴るか、時には殴ることもあって諦めてしまった。 私だって最初の頃は彼に尽くすようにあれこれやっていた、もちろんそれがよくないと理解し、今は冷たくあしらうようにしている。靴下だって拾ってなんかやらない、洗濯機に入っている分だけ洗ってやる、床に落ちている靴下はいつか捨てるけどそんなことすら周は関知してないようだ。 ご飯はあれこれ作るのは諦めてインスタントラーメンを作った。野菜はたっぷり入れて生卵も落とす。ああ、冷蔵庫も空っぽだ、明日買い物行かないと──これも最初の頃は休日になればふたりで買い物に行ったものだけれど、今は完全に別行動、何のための同棲なのか。 「できたよー」 箸を洗って布巾で拭いて小さな座卓に置いて声をかける、どんぶりを見た周は嫌そうな声を上げる。 「インスタントラーメンかよー、だったら外に食べに行こうくらい言えよ、そのほうがよほど早かっただろー」
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