奇跡

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 だが、それならそれで疑念……それも、あまりに不可解な疑念が。 「……でも、(けい)くん。その日以降……私が死んだはずの日以降も、私達のやり取りは続いてたよね? あれは、いったい……?」  そう、震える手をどうにか抑えつつ尋ねる。我ながら何とも馬鹿げた質問(とい)だが、今はそんなこと言ってる場合じゃない。ともかく今は―― 『……えっと、そのことなんだけど……実は、美嘉(みか)ちゃんがいないことが凄く辛くて、苦しくて、淋しくて……だから、君のスマホも僕名義で契約し直して……その、一人でメッセージのやり取りを……うん、我ながら気持ち悪いね』 「…………」  そう、自嘲の籠もった声が届く。そんなエピソードを聞き終え、真実を知ったあたしは――  ……怖い、怖い怖い怖い怖い怖い!!!! いや何なのこの男!? 死んだ女と一人で会話を続けるとか、どう考えても正気の沙汰じゃ――  ――ピンポーン 「…………えっ?」  ふと響いた電子音に、ハッと我に返る。……誰? こんな時間に。注文したバッグは確か明日のはずだし。ともかく、この狂った男に一言断りを入れインターホンの方へと向かう。そして、 【――こんばんは、久しぶりだね】 「…………はい?」  すると、画面に映ったのはショートボブの若い女。だが……正直、全く見覚えがない。きっと、隣の部屋とかと間違えているのだろう。ともあれ、そんな確信に近い推測を伝えると―― 【――えっ、そんなこと言うの!? 折角、半年ぶりに親友が会いに来たのに……すっごいショック】  すると、大きく項垂れた様子で告げる女。いや知らねえよ。生憎、お前の求めてる半年ぶりの親友とやらはここには―― 「…………え?」  卒然、背筋がゾクりとする。……いや、流石に偶然よね? だって、まだ昨日の今日だし……そもそも、ここが分かるわけ―― 【……ほんと、ショックだなぁ】 「……いや、その……」  すると、あたしの心中を知ってか知らずか、軽く溜め息を吐き呟く女。そして、再び顔を上げ――満面の笑みで、ゆっくりと口を開く。 【……折角、半年ぶりに会えるとすっごく期待してたのに……ほんと、ショックだなぁ……】 「うぁあああああああああああああぁ!!!!」 『――えっ、何!? 誰の声!? いったい何があったの美嘉ちゃ――』  
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