昭和に生まれた俺に合う時代

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俺は昭和に生まれた。 だから、価値観が古いと言われることも少なくない。 先日も、部長から「そのやり方だと、いつかパワハラだって言われるから気を付けな」と言われた。 俺的にはパワハラではなく、後輩を思いやって、心配してのことなのだが、今はそういう時代なのだろう。 俺の時代は、何かしでかせば、蹴っ飛ばされていた。実際、俺も何度か蹴っ飛ばされたことがある。 別にそれがしたいわけではないが、上になればなるほど、そういう理不尽から解放されるものだと思っていた。だが、今の時代、令和は上司でも部下に気を遣い、苦しいことが少なくない。 昭和の時代の方が、俺には合っているんだろうな、としばしば思う。 結婚もしていない俺は、ゲームが好きで、休日ともなれば日がな一日、ゲームに興じている。 しかし、冷蔵庫の中身が空っぽとなれば話は別だ。パソコンでやっていたゲームを中断し、スマホに切り替え、家から出た。まあ、行先はコンビニだが。 俺はスマホでゲームを続けながらコンビニに入り、カップ麺やおにぎり、ちょっとだけ健康を気にして、スティック野菜なんかをカゴに放り込んだ。 カゴをレジに置く。店員を見ると、明らかに日本人ではなかった。 そういえば、こういうことも増えた気がする。まあ、個人的には全然気にならないのでどうでもいい。煙草の銘柄さえ間違えないでもらえれば。 俺は欲しい煙草の番号を伝え、それも購入品に加えてもらった。 さて、支払い支払い、と思い、ポケットに手を突っ込む。 ……そこから出てきたのは、百円玉一つだった。 俺の左側のディスプレイに表示された金額からは程遠い金額だった。 財布を家に忘れてきたらしい。 嘆息を吐く。またか、と。 俺はこういう場面に遭遇することが少なくない。きちんと財布を持ち歩けばいいだけなのだが、よく忘れるのだ。 若い時の俺だったら、慌てふためいたに違いない。 だが、だいぶ年を重ねた俺は慌てたりしなかった。 「これでお願いします」 スマホの端末を操作し、なんちゃらペイの画面を差し出した。なんちゃらペイの名称は知らない。数が多すぎる。 店員は何も言わずバーコードリーダーでなんちゃらペイに差し出された画面を読み取り、支払いが終わった。 昭和の時代の方が合うな、と思っていたが、令和の方が合うのかもしれない。 昭和だったら、財布を忘れたら、家にまで取りに帰る必要があった。平成だったらまだましだ。コンビニ内にあるATMでお金をおろせばいいのだから。 でも、令和はスマホがあれば何でも完結してしまう。ものぐさな俺にとっては、令和が一番合っている時代なのかもしれない。 ……と思ったが、昭和の方が合っているのかもしれない。 俺は購入した商品を抱え、コンビニを出た。これではスマホでゲームが続けられない! 「昭和だったら、袋、くれたのにな」 そうぼやきながら、家まで走って帰った。 ~おしまい~
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