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 ハンスの乗った車のフロント部分は破壊され、まるでジャバラを畳んだように縮んでいた。エンジン部分から煙が上がる。衝突の衝撃で気が遠くなったハンスは頭部から額にかけて流血している。ハンスが驚いたのは逆走して来た車だ。瞬間には気づかなかったが、良く見ると通常の車体を鉄のロールゲージで覆ってある。ハンスの半壊した車に比べ、ほぼ無傷だ。故意に逆走しハンスの車を狙って衝突して来たのだ。  衝突され、フロント部分を圧縮されたせいで車内も変形し、ハンスは生きてはいるものの下半身を挾まれ動けない状態だった。  衝突して来た車からゆっくり降りて来たのはハンスをつけ回し、攻撃して来た車の奴と同じ、やはりゴーストフェイスの仮面をしていた。ハンスは無線で大友らがいる作戦倉庫に通信を入れるが、衝突の影響からか車内に搭載されている無線は完全に壊れている。ハンスは上着の懐から端末を取り出した。  湾岸倉庫にある作戦室内のモニターに血を流すハンスの顔が投影され、そこにいたメンバー全員が絶句する。 『ハンス、何があった――!?』  大友が叫ぶ。 『すまん……このザマだ……どうやら今回の事はこいつらが……絡んでいるぞ、録画は大丈夫だな?』と、ハンスは端末の動画通話の画面を反転させ近づいて来るゴーストフェイスに向けた。 『何者だ、こいつらは?』 『わからん……とにかくこいつらを調べろ、おそらく国営とも何か繋がっているぞ』  大友は直ぐに「ハンスの現在地を調べろ、近くのアジトから援軍を出すんだ!」と傍にいるメンバーに指示を出す。 『……間に合わんさ、それより大友……例のやつはあるな?』  大友はハンスの言葉を疑った。これはハンスと大友、二人だけしか知らない事で、もしもの時の最終手段だった。 『まさか、ハンス、あんた車に?』 『約束したろ、イザという時は俺たち自らの生命も武器にしてでも抗うと……』  室内のメンバーたちが顔を見合わせる。皆、どういう事かは薄々と勘づいているが声にもならない。 『……俺にスイッチを押させる気かよ?』 『お前以外に誰がいるんだよ……』  ハンスは苦笑しながら言った。ハンスの顔面は益々血が流れ、その流血が目に入るためかもはや目を開く事も出来なくなっていた。  ゴーストフェイスの一人が銃で肩をポンポンと叩きながら車内のハンスを覗き込んだ。国営警察の交通課や鎮圧ロボットを乗せた大型車輛がハンスの半壊した車の周囲を取り囲む。だが、銃を持ったゴーストフェイスの一人には誰も行動を起こそうとはしない。通常、これが一般市民なら即鎮圧態勢を取るはずだ。
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