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つくづくわかりやすいな。
冬の真っ最中なのに、姉ちゃんは向日葵のように眩しい真夏の笑顔で搭乗口に消えた。すると一瞬で、頑張って笑顔を返していた蒼ちゃんが萎れた。
「冷蔵庫で忘れられて縮んだ菜っ葉?もしくは力尽きて木から路上に転がったセミ。間違って地表に出てきて干からびたミミズかも」
「早奈もしかして、それオレのこと?」
「もしかしなくても蒼ちゃんだよね、まさに」
「待って。なんでそんなたとえ?傷心のオレってセミとかミミズと同列?」
「出汁を搾り取られてくたくたの昆布。または、開き切ってへにゃへにゃの出がらしの茶葉」
「なにそれ、ナニ仕方ないなって微笑みながら新しいの出してきてんの。昆布とか茶葉で格上げしたつもり?」
「着倒してのびのびになって寝巻に落ちたTシャツ!」
「うわ。ファイナルアンサー?満足そうにドヤ顔しない。もっとあるでしょ、たとえるなら。萎れるだったら、花とかせめて木とか、他にいくらでも」
「センチメンタルにたとえを飾ったって、手詰まりの現状変わんないよ」
「う」
ダウンジャケットの胸を抑えて蒼ちゃんがよろける。とぼとぼ歩む背中について、駐車場に向かった。言い過ぎたかなあと反省しなくもないけれど。じれったいんだよなぁ。
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