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それから半年、ディアンと行動する事は多くなった。
私の執事らしいのだけど、どちらかと言えば覚えているのは家庭教師の様な一面が多い。
「羽菜お嬢様、前回と今回のテストの差です。ご査収ください」
「うぇ、どうにも数学は苦手よ」
「苦手ならば克服いたしましょう、分からない所があればすぐさま補佐いたします」
ずっとこんな感じだったことを覚えている。
予め搭載されたデータを用いた問題制作と、それでいて理路整然と教えてくれるから分かりやすさはあった。
「ねぇディアン。テストでいい点を取ることってそんなに大事?」
「大事です、未喜渡様はいずれ羽菜様に後継になって欲しいのですから」
「私はやだなぁ、ずっと勉強漬けなんて」
でもその代わり、今のアンドロイドと違って融通は効かなかった。
初期型故に会話を分析し対話に活かす能力には乏しく、話していても最初の頃はつまらなかった。
「お嬢様、今晩は寝る前になにか読みますか?」
「ううん、いい。今日はもうすぐ寝たい」
「畏まりました、では何かあればお呼びください」
「いいよぉ、ディアンも寝なよ」
「私に寝るという機能はないので、スリープモードなら存在しますが」
会話のすり合わせもだいぶ大変だった。
鬱陶しいと感じたことも多かった。
だけど彼のことを身近に感じたのはあの日のこと。
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