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初めてそれに会ったのは、私の13歳の誕生日だった。
「初めまして羽菜お嬢様、私は執事型アンドロイドのディアンと申します」
「アンドロイド?」
それはSF小説の中にしか存在しないと思っていた。
背丈や見た目は人と何ら変わらない。
しかし機械質で何処か張り付いた様な笑みを浮かべる彼があの頃の私はどうも苦手だった。
「本日より羽菜お嬢様のお側仕えとして機能させて貰います、そしてお誕生日おめでとうございます」
「う、うん。ありがとう」
それに初対面はどちらかと言えば困惑の方が強かった。
いきなり顔も過去も知らない相手にお祝いされても、嬉しいよりはそう思ってしまう。
「それよりお父さんは?」
「お父上の未喜渡様でしたら本日は予定が重なる都合上、お嬢様の誕生日パーティには参加出来ないと」
「そう、やっぱりそうなのね」
お父さんが忙しいのは知っていた。
思えば1年くらい前からただの町工場に過ぎない私達の家が急成長したのは、アンドロイドの製造に携わるようになってから。
製造した部品は売れに売れて、私達の暮らしも豊かになった。
でもその代わり、いつも一緒に祝えていた誕生日を欠席されたのが私には堪らなく辛かった。
「そう気を落とさないでください羽菜お嬢様、未喜渡様とて忙しい身なのです」
「分かってるから、だから少し放っておいて」
我ながら本当に嫌なファーストコンタクトだったと思う。
あの頃の私には、父は家庭より仕事の方が大事なのだと思えてならなかった。
だからって当たっていい事なんて無かったのに。
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