忘れ雪の約束

4/10
22人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「ねぇお父さん。じゃあなんで僕だけは山でのことを覚えてるんだろう?」 「え? う、うーん、父さんもさすがにそこまでは……」 「それにね、山ではいつものメンバーに加えて、もう一人知らない女の子がいたと思うんだ」 「女の子?」 「僕はその子と一緒に……そう、雪だるまを作った。雪だるまを作ったんだ」  また一つ思い出がよみがえる。  雪合戦の途中僕は偶然その女の子と一緒になって、皆に内緒で抜け出したんだ。  それで二人きりで雪だるまを作って、その後、彼女が何か大事なことを…… 「まぁ、不溶山が危ない場所なのは事実だ。昔雪崩事故もあったらしいしな。だから母さんの言う通り、これからはあまり山に近づかないように」 「……うん。分かった」  部屋から出ていくお父さんの背中を見送った後、僕はベッドにどーんと大の字に倒れた。  暖房のきいた部屋で毛布の上に転がるのは心地良くて、僕はそのままウトウトとまどろみの中に落ちて行った。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!