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「ねぇお父さん。じゃあなんで僕だけは山でのことを覚えてるんだろう?」
「え? う、うーん、父さんもさすがにそこまでは……」
「それにね、山ではいつものメンバーに加えて、もう一人知らない女の子がいたと思うんだ」
「女の子?」
「僕はその子と一緒に……そう、雪だるまを作った。雪だるまを作ったんだ」
また一つ思い出がよみがえる。
雪合戦の途中僕は偶然その女の子と一緒になって、皆に内緒で抜け出したんだ。
それで二人きりで雪だるまを作って、その後、彼女が何か大事なことを……
「まぁ、不溶山が危ない場所なのは事実だ。昔雪崩事故もあったらしいしな。だから母さんの言う通り、これからはあまり山に近づかないように」
「……うん。分かった」
部屋から出ていくお父さんの背中を見送った後、僕はベッドにどーんと大の字に倒れた。
暖房のきいた部屋で毛布の上に転がるのは心地良くて、僕はそのままウトウトとまどろみの中に落ちて行った。
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