うちの夫がバカなんです

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 ちょっと待って。  あれはおやじギャグ?  いや、やっぱり幼稚なの?  無邪気に歌ってた姿は、憎らしいくらい子供そのものだった。  じゃあ、おやじギャグと幼稚さの違いって?  突如湧いて出た疑問にモヤモヤする。  木製のおつまみ入れに盛ったピーナッツを無造作に掴んで口に放り込む。  ボリボリとかみ砕きながら、すっかりおざなりになっていたテレビに目線を移した。  ちょうど番組MCのお笑い芸人が、ベテラン俳優のおやじギャグに大げさに突っ込んでいた。  テレビのスピーカーから爆笑が響き渡る。  冷めた目でそれを観ながら、口に残ったピーナッツをビールで流し込んだ。  同じだ。  加齢とともに知識が増えて多少言葉を整えただけで、本質は同じ。  ということは。  男はずっと幼稚(バカ)なのだ――。 「知ってた」  テレビを消して残り少なくなったビールを一気に煽った。  台所でピーナッツを棚に仕舞ってから空き缶をゆすぎ、シンク下の缶入れに片づける。  洗面所で歯を磨いた後、寝室に向かった。  眠い。  寝室に入るとダブルベッドの真ん中で拓海が寝ていた。  安心しきった寝息を立てて。  その無防備な姿に軽くため息をつく。  そういえば、明日は忙しいって言ってたな。  つまり。  『明日へ行く』というのは、『先に寝る』ことだったのだ。  まあ確かに寝て起きたら明日になっているのだから間違ってはいない。  いないけど。   「分かりづらいわ」  私の寝場所を確保するため、突っ込みがてら寝てる拓海をゲシゲシと蹴る。  「ぐっ」と短い、寝言とも悲鳴ともとれる音を漏らして反対側に転がっていく。  端に追いやった拓海を横目にベッドに入った。  そして私も寝たのだけれど、地の底が蠢くような拓海のいびきが始まり、私はなかなか明日に行けないのだった。
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