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そろそろ祭りも終わる。夜は決まって町の人間だけで騒ぐのが通例だから。
さすがに、100年に一度の参加とはいえ、それくらい私でも覚えている。
なんせ、私は賢い精霊だ。
すでに片付けを始めている町の人間を横目に、ヒスイに連れられて出入り口である門の前に向かって歩みを進める。
「昔から聞かされてはいた祭りだったけど、今日は本当に楽しかった。……君のおかげだよ」
「……そう。私も――久々に、人間と会話ができて楽しかったと思う。それに、コレもありがとう」
「ふふっ……最後まで面白い物言いだよね? それは、気にしないで。とても似合ってるよ」
ヒスイから貰った私の瞳と同じ色の宝石は、夕焼けの下でも輝いて見える気がした。
「もしも、良かったらだけど……また、会えないかな? この町にきたということは、近くの町に住んでいるんだろう? 実は、この町に同世代の人間がいなくてね。今日は、とても楽しかった」
また会いたいといわれるとは思わなくて、少し悩んだけど……私も、そこの森に棲む精霊だ。近いといわれたら近い。
私は自然と頷いていた。
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