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受験を間近に控えた高校3年生の冬。私、木村波瑠は、親友の井上菜穂と下校していた。私たちは他愛のない話をしながら、駅へと向かう。
そんな私たちに容赦なく冷たい北風が吹きつける。
「あぁ、寒い……冬なんてキライだ」
冷たい風に文句を言っていると、ナオが声を潜めた。
「前にいるのは遠藤くんじゃない?」
「え? ホント?? どこどこ??」
「ほら、2つ前の集団の一番右」
「あっ、ホントだっ! やったっ!ラッキー!!」
密かにガッツポーズを繰り出す。
遠藤くんは、私が高校一年生の時から片想いをしている同級生。ちょっと癖のある黒髪に色黒の肌をした長身の彼を見て、思わず頬が緩む。
そんな時、後ろから声をかけられた。
「よぉ、ハル! なに、にやにやしてんだよ」
「……ユウト……なにか用?」
同じ部活だった岡田優翔だ。癖っ毛は遠藤くんと同じだけど、他は真反対。茶髪で色白、背もちょっと低め。私は眉間に皺を寄せながら、ユウトを見る。
「ははっ! そんな顔するなよ。俺も帰りだから、一緒に帰ろうぜ」
そう言いながら、ユウトは私の横に並ぶ。
「え~!? 一人で帰りなよ!」
「いいじゃん。どうせ同じ方向だろ?」
そんなやり取りをしていると、横からナオが口を挟んだ。
「いいよ。どうせ追っ払ってもついてくるんでしょ」
「アタリ!!」
ユウトが上機嫌に親指をたてる。
「はぁ……あんた、友だちいないわけ?」
そんなユウトに冷たい視線を送ると、再びナオが仲に入ってきた。
「まぁ、いいじゃない。ユウトがいると面白いし」
ナオが私たちのやり取りを聞いて可笑しそうに笑う。そんなナオに、私は頬を膨らませて抗議した。
その時、ビュウと強い風が私のボブヘアを巻き上げた。
「寒っ!」
私はリュックの肩紐を握っていた手に”はーっ”と息をかけてから、コートのポケットへと手を突っ込む。
そんな私の様子を見ていたユウトが不思議そうな顔をした。
「寒いんなら、なんで手袋しないんだよ?」
「え? だって、手袋するよりもコートのポケットの中のカイロを握りしめた方が温かいじゃない。手袋してたら、カイロ握っても温かくないし」
「あぁ、なるほどな。ハルらしい」
そう言うと、ユウトは人懐っこい笑顔を浮かべた。同い年なのに、ユウトが少し幼く見えた。
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