ゆきだるま、ゆきだるま。

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ゆきだるま、ゆきだるま。

 これは私が小学生の時に経験した、怖い話。  その年の冬は結構寒くて、初雪が十二月初旬には観測されていた。残念ながらその雪はちょろっと降っただけですぐに溶けてしまったけれど、子供達の間では“今年は遊べるくらい雪が積もってくれるかも”と話題になったのである。  当時私が住んでいたのは、とある賃貸マンション。  そのマンションには私の他に、小学生が数人住んでいた。中でも一つ年下のやーくんと、二つ年下のなかちゃんのあたりはよく遊んだ記憶がある。私が中学生になると同時にやーくんは引っ越してしまったし、なかちゃんたちも私が高校生になる頃に引っ越してしまったので今頃どうしているかはわからないが。  とにかく、私が小学生の時――正確には多分、私が小学校四年生の年とか、それくらいだったと思う。  通学班の待ち合わせをしている時にも、雪の話題が出たのだった。元気いっぱいの悪戯小僧だったやーくんなんかは凄く盛り上がっていて、“雪いっぱい降ってくれねーかな!”としきりに口にしていたのを覚えている。 「雪降ったらなあ、俺雪合戦と雪だるまは外せねえ!あと、できればかまくらも作ってみたい。人生で一度も作ったことねーんだ!!」 「かまくらって、かなりの量の雪が要るよ?……そこまで降るかなあ。あと、びしょびしょのやわらかい雪じゃ難しそうだし」 「降るったら降る!なんなら降らせる!俺はさかさてるてるを大量生産してでも雪を降らせるううううううう!うおおおおおおおおおおおおおお!」  まあこんなかんじ。  さかさてるてるって雨を降らせるものでは?雪には効果ないんじゃ?と心の中でつっこみつつも、元気が良すぎる彼のことを微笑ましく見ていたのだった。私にとってやーくんは遊び仲間であると同時に、ちょっとかわいい弟のような存在でもあったのである。  そして、彼のそんなお願いが通じたのだろうか。  お正月が明けて新学期が始まってすぐのこと。私達の町に、久々に大雪が降ったのである。  もちろん、大雪といっても北国のそれとは比較にならない程度の量だ。雪下ろしをしなければ屋根が潰れるなんてこともないし、ホワイトアウトで道が見えなくなるなんてこともない。それでも、私達にとっては“しっかり積もって遊べるくらい”というのは、十分大雪の範疇なのだった。 「いやっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおい!うっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおい!」  しかも、雪が積もったのが金曜日の夜。土曜日、公園で子犬のように駆け回るやーくんの姿を見て思わず笑ってしまったものである。  走り回った直後にすっころび、雪山のなかに頭を突っ込んでしまったところも含めて。
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