ゆきやま、ゆきやま。

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ゆきやま、ゆきやま。

 雪の思い出?そりゃやっぱ、登山の話っしょ!  なんだよタキヤ、お前山登りに興味あるのか?そりゃいい、今度一緒に登りに行こうぜ。  といっても、初心者はいきなり冬の山になんぞ登っちゃいけないんだけどな。まずは夏山登山から始めないと。難易度が段違いだし、それに山とコースによってハードルも大きく変わってくるってなもんだ。高尾山なんかが最初はおすすめだぞ。ハイキング気分で行けるくらい、整備された道も多い。降りる帰りの道だけ、登山道って選択もできるしな。  と、話が逸れちまった。  そうそう、雪の思い出の話だったな。  少々うろ覚えなんだが……俺が人生で見た山の中で、一番美しいと思った山がある。去年行った山なんだが、名前忘れちまってなあ。  ただ、冬も規制が入ってない山だったってことと、中級者レベルの山だったってのは覚えてるかな。俺はそこに、一人で登ることにしたわけだ。  もちろん、必要な装備はきっちり揃える。食料もそう、衣類もそう。あと、ラジオっては必須装備だ。天気が荒れそうだと思ったら途中で登るのをやめるのも大事なことだからな。  詳細は省くが。  俺は登山届を出すと、ある大きな山小屋へ入った。長い道のりになるから、今日はここで一拍して、明け方頂上まで一気に登るってな予定だったわけだな。もちろん、天気が予想外に荒れそうだってことになったら下山や待機も視野に入れるつもりで、だ。そうそう、登山ってのは日帰りでやらないことも多い。特に危険が多い雪山登山ってのはそういうもんなんだ。  で、不思議なことにその山小屋には男ばっかりでなあ。山小屋を管理している人もおじさんだった。何でだろうって思って尋ねると、おじさんは言うんだよ。 『この山には昔から神隠しの話があって、女性は入らない方が言われてるんだ、お前さんたちそんなことも知らないで入ってきたのか』 って。
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