14人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
○月○日 心配
この日は配給の日。
当たり前のように、昼過ぎから寝床周りが騒がしくなる。
前日に食料配布があったと思えば連日に渡り色々あると気が休まらないという部分も出てきた。
何百人は超えないにしても、数十人の人間が一箇所に来るのだ。
時間が過ぎるのを待つしかない。
最近ではお隣のトシさんや先輩と顔を合わせたら挨拶するくらいの仲になれた。
世間と離れようと思ってたといえ、誰とも話さないというのはやはり酷な事だと改めて痛感した。
騒がしくなり出した中で、トシさんを見かけたので挨拶をする。
「こんにちは。また寒くなりましたね。」
「あぁ、どうも。そうだね・・・」
どこかぶっきら棒なところはいつもの事だが、いつにもなくその様子が強い。
"期限でも悪いのかね?"
そう思い早々に離れる事にしたが、どうやら理由は別のところにあったようだ。
「いやね、風邪ひいちゃってさ。飯もまともに食べれないんだよ。」
「マジか・・・そりゃ大変だね。」
まともに暖房も当たらない場所で、体調崩したんだ。大病でなければいいのだが・・・
マサオは心配になってきた。
それに、自分もいつ体調を崩すのかわからないからこそ注意しなくてはいけない。
サバイバルに似たこの路上生活に対しての考え方が変わってきた。
風邪の話を聞いてマサオはあるものが手元に残っていたのを思い出し、トシさんに手渡した。
「はい、これ。風邪薬だから、よかったら使って。」
「悪いね。お兄さん、ありがとう。」
かつて、アルコールと共に大量摂取する事で命を絶つ事を考えていた。おそらくはその時の名残だろう。
まさか自分を死に導こうと思い購入したものがここで役に立つとは思ってもみなかった。
"あの薬が人助けに使われたのなら満足だ。"
マサオは目と鼻の先にある配給の会場に向かう。
最初のコメントを投稿しよう!