act0 かつてあった世界と今

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act0 かつてあった世界と今

 いつも見る夢がある。  とはいっても、それはここ八年ほどのことではあるが。  目を開ければ、家族がいた。  温かい味噌汁を作ってくれる母。  新聞を片手に、政治に対していつも文句を言っている父。  それに対して、聞き飽きたとめんどくさがる姉。  そして、席に着き愛犬を抱き上げる俺。  暖かく、そして甘い光景だった。  もういつの記憶だっただろうか?  いや、そもそも、そんな記憶は本当に正しいのだろうか?  もはや、俺には分からない。  もうどれくらい経ったのか……  俺が餓鬼の頃の記憶……  そんな甘ったるい時も存在していたのだ。  ごくごく普通の家庭……  昔からよくあり、そして一般的な家庭像。  今は存在しない……ごくごく普通で陳皮で……掛け替えのない団欒……  世界は変わってしまった。  今の世の中、そのような平和な姿など見ることは出来ない。  そう、この国ではそれが一般的だった時代が確かにあったのに……  時代の変革……いや、世界そのものが疲弊している。  それは当時子供だった俺も戻ることは出来ない。  時間はもどることは出来ないのだから……              ・
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