ポケット一つ分の街

3/8
30人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
異論は認める。あくまで僕の場合、上着を着ていれば愛用の長財布は左の内ポケットが定位置だ。 スマホは手に持つ事が多いので、どこかに入れて存在を感じられたらそれでいい。定位置はあって無い様なもの。そしてお尻のポケットにはハンカチがいないといけない。 しかし上着を着ない季節は。 財布やスマホをパンツの前ポケットに入れている人もいるけど、どうも僕の場合そこは違和感がある。なんか違う。 必然的にハンカチを前ポケットに入れて、尻ポケットにしまう事になるけど、僕は自分がガサツであると理解している。 どさっと座ってスマホを破壊しない様に気を付けなくてはならない。財布は壊れないけど、カード類が必死で曲がらない様に耐えていると思えばかわいそうだ。 だから座ったりする時は必ずポケットから出して── そうだよな。ちゃんとテーブルの上に乗っかっていた。お前たちはいい子だ。 立ち上がって右の尻ポケットに財布をしまい、スマホを開く。うん、この安心感。 今は部屋の中だからいいが、もし外でこのポケットの中の安心感がなくなったら物凄い焦燥感が溢れて来るのだ。経験がある。二度と感じたくない。 皮膚のすぐ上、体温を感じるぎりぎりのエリアであろう場所。 そこにいつもの物が収納されている、この安心感よ。 違和感があったら、そこにはきっといらない物が勝手に侵略しているはずだ。 丸めたレシート程度なら構わないけど、あんなものやこんなものが入っていたらすぐに排除しないと気持ち悪い。 さて、ところで。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!