ポケット一つ分の街

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喫煙者というだけで嫌な顔をされる事も多いのに、なぜ煙草なんか覚えたのかな。そろそろやめるか、せめて電子煙草デビューするか。 でも結局やめられなくて、煙草と電子煙草の両方吸ってる人もいるしなあ。 とりあえず煙草は──あった。 どうやら枕元でライターと共に僕の寝顔を見守ってくれていた様だ。一緒にベッドで眠っていたら、かわいいこいつを潰していたかもしれない。 早速一本くわえて火を点け、シャツの胸ポケットにしまう。いつもの場所にいつもの物がある、このフィット感と言うか安心感は異常。 考えてみれば、人の最弱点である心臓の上に、嗜好品とはいえ猛毒の塊である煙草を配置して安心するってどうなんだろうな。 でも僕の胸ポケットにはまだしばらくは煙草が居座る事だろう。それも固い箱型じゃなくて、紙のソフトパックの方がいい感じ。 ふう、と紫煙を吐いて…… あれ、スマホはどこだろう?財布は? おーい?呼んだら返事くらいしてくれよ。そしたら僕は探すのをやめて、全力で逃げるだろうけど。
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