ポケット一つ分の街

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時間はさっき確認した様に午前二時。 こんな時間に煙草や財布といった子分達をポケットに入れて引き連れて、僕はどうするつもりなのか。明日……いや、朝になれば面倒な仕事だというのに。 でもまあ。なんだかなあ。 今からまたすぐおやすみって気分でもないし、朝まで起きていても大したダメージはなさそう。疲れたと思ったけど少し寝たらさっぱり、よくある事だ。 そう言えばお腹が空いてる。ラーメンでも食べに行こうかな。 足取り軽く車のキーを手に僕は部屋を出る。 ちなみにキーの定位置は左の前ポケットだ。 ☆ 国道沿いの24時間営業のラーメン屋さんで、とんかつラーメンを注文する。これはとんこつラーメンにとんかつをトッピングしたこってりメニュー。 せっかくカラッと揚げたとんかつをスープに浸してどうする、という意見もあるけど、僕はこの店のこれが好きだ。 好きな物に理屈も屁理屈もいらない。胃袋もポケットと同じで、いつもと同じもので満たされる方が落ち着くに決まってるさ。 時間はもう午前三時過ぎ。お腹がいっぱいになったら今度は少し歩きたくなった。 今夜の僕はわがままで気まぐれだ。おうちに帰ってさっさと坊や良い子だとねんねすればいいのに。 こんな時間だし、少しくらい駐車場に車を置いていてもラーメン屋さんも怒らないだろう。 前ポケットに手を突っ込んで、いつも車で走る国道を歩いてみる。なんだかカッコつけてる自分が恥ずかしいけど大丈夫、誰も見ていないし、気にしていないから。
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