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「どちらさん?」
ドアホンを押した実香の前に出てきたのは、びしりとスーツを着こなしている割に目つきの悪い大柄の男だった。ジロジロと実香を見定めるような素振り。その後ろには同じような黒っぽいスーツの、数人の大柄の男らがうようよしている。
確か一人暮らしだと聞いていた。なのになんで本人じゃない人たちがこんな物々しく調べ回っ……調べている?
「……そちらこそ、どちら様?」
実香は男の目つきを跳ね返しながら聞き返した。
「津田楓子さんのお友だち?」
男は尚も質問を重ねてくる。
「そちらはお友だちじゃなさそうですが?」
一人で商売を始めた以上、度胸は座っている。増してや楓子という人に関わることなら後ずさりしたくない。
「……失礼」
男はポケットからごついバッジ付きの手帳を取り出した。実物より更に人相の悪い写真の横に、「秋葉」との名前がある。世の中に疎い実香でもわかる。刑事だ。
「楓子さんに、何かあったんですか?」
聞いたら今度は答えてくれた。
「行方不明なんです。繰り返しますが、あなたは彼女のお友だちですか?」
友だちじゃない。今度は即答したが、秋葉は実香に話を聞きたいと外へ誘った。
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