第26話 歌は家につれ家は歌につれ

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 そう思うなら自分で動けばいいじゃないって言われるかもしれないけど、私が何か言いだす前に誰かが事を起こしてくれるんだもん。  この恵まれた環境にあぐらをかくつもりはないけど、今年一年は新人さんということで、甘えさせてもらいたいな。  そんなことを考えていたら、倉じいが立ち上がってお風呂に入ると言ってリビングを出て行った。  それをきっかけにみんなでの食事も終わりとなり、私は静子さんとともに使った食器の片付けに入る。  なんてことのない作業だけど、すごく愛おしい。  こんな日常がずっと続けばいいなと、私はかなりの頻度で同じことを思うのだけど、それくらいここでの暮らしは充実している。 「姉ちゃん姉ちゃん」 「どうしたの?」 「昨日姉ちゃんが歌った曲って、CDで持ってたりする?」  どれのことだろう。  大半は私のパソコンに入ってると思うから、CDになってなくてもすぐに焼くことはできる。 「何か欲しいの?」 「ミスチルのやつ」  それは私が書いただけで、歌ったのは呉本くんだ。  でも、あの曲を気に入ってくれたのなら嬉しい。
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