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「──ん」
いつの間にか朝になっていたらしい。明るくなった部屋の中、身体を起こさず窓の外に目を向け、ボーッと昨日の事を振り返る。
一線を超えた昨晩、少し意識を失っている間に凛太郎は冷めたシチューを温め直してくれた。俺達はようやく夜ご飯にありつけ、終わった後一緒にお風呂に入り、ベッドに寝転びイチャイチャ..なんてする筈もなく、自分は先に爆睡..したの迄は覚えている。
「春。おはよう」
「──おはよう」
目を覚ますと、見慣れた景色の中に笑顔で自分を見下ろす凛太郎が居た。見慣れた光景──だが、少し違うのは彼も自分も裸で同じベッドの上にいるという事。そして──
「...痛っ」
「昨日はいっぱいシちゃったから無理させたのかも...ごめんね」
顔を顰めながら腰を摩る俺に、申し訳なさそうに謝りながらも愛おしそうに俺を見つめて首筋に軽くキスをしてくる凛太郎。そうだ──俺達はようやく本当の恋人になったのだ。お互い好きを何回も連呼していた昨晩の出来事を思い出してカーッと赤くなる。「思い出してるの?」と凛太郎に早速揶揄わられ居た堪れなくなる。
「可愛い春。朝ご飯出来てるから一緒に食べよう」
「....うん──って、わっ!」
下着姿の自分をシーツでくるみ、ふわっとお姫様抱っこの体勢で抱えて起こす凛太郎。彼の腕の中で思わず抵抗しようとするがお尻と腰が痛過ぎてそれどころではなく静かになる俺を見て笑う。そうして唇にキスをした後、凛太郎はコツンと額に自分の額を当てながら幸せそうに「これから宜しくね」と呟いた。
──まるで世界が変わったみたいに眩しく感じる。外から差し込んでくる柔らかな日差しが自分達を祝福してくれる様に包み込んでくれる。微睡んだ意識の中、彼の言葉に小さく頷いた後、幸せを噛み締めながら今度は自分からキスをした。
本編「ただ、好きなだけ」完結
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