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「私は、贅沢など必要とはしておりません」
はっきりとそう告げる。律哉が、驚いたように目を瞬かせているのがわかる。
「だが……」
「私が望むのは、たった一つ。……あなたさまと一緒に、この桐ケ谷家を建て直したい。それだけです」
心の底からの本心だった。
贅沢な暮らしなんていらない。着るものや食べるもの、住む場所に困らなければそれでいい。少なくとも、真白はそう思っている。
「しかし、それでは……」
「いいえ、私にはその覚悟があります。……長年お父さまに鍛えられただけはありますから」
鍛えられたと言えば、聞こえはいいかもしれない。けれど、それは鍛えたというものじゃない。ただ、一歩間違えれば虐待に当たるような。そんなものだった。
「ですので、どうか。律哉さまのお力になりたく思います」
彼の目を見つめて、自分の決意を口にする。……律哉は、ふっと口元を緩めてくれた。その姿が、とても艶めかしい。
その所為で、真白は息を呑んでしまう。柄にもなく顔に熱が溜まっているのがわかってしまう。
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