きみをください

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「啓真、大丈夫?」 「はい…力は入らないですけど」 「ふ、可愛い…」 額や頬にキスを落としながら結人さんが微笑む。 首と鎖骨を甘噛みされてまたおかしな声が出てしまう。 「お店に夏季休業のお知らせが貼ってあったね」 「はい…ゆっくり旅行にでも行こうかなって思ってたんですけど…」 「そう…」 「今、やめる事にしました」 汗ではりついた髪をよけてくれる優しい手。 その手を取って、きゅっと指を絡める。 「……結人さんと過ごしたいから」 「!」 結人さんが目を瞠る。 こういう表情を見るのは初めてかもしれない。 「結人さんのお休みはいつからですか…?」 「啓真と合わせる」 「え? いえ、それは申し訳ないですから…」 「ほとんど重なってるから大丈夫」 「ほとんどって…」 重なってない日もあるって事じゃ…? 「啓真が俺と過ごしたいって思ってくれた事がすごく嬉しいから、一日も無駄にしたくない」 甘いなぁ、とどきどきしながら結人さんを見つめる。 俺の視線を受け止めて、結人さんの顔が近付いてくる。 でも唇が触れるすれすれで動きが止まった。 「…まだ“好き”は怖い?」 「……」 怖いなんて考えてる余裕なかった。 結人さんの事で頭がいっぱいで、それどころじゃなかった。 「怖くてもね、」 「…?」 「それでいいんだよ」 噛み付くように唇が重なり、ぎゅうっときつく抱き締められて腕の中に閉じ込められる。 思考が蕩ける甘いキスにくらくらして、結人さんにしがみ付いた。 END
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