「うん、逃げよう!」 〜幼馴染と距離をおこうと思ったのに、なぜか上手くいかない…〜

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おまけ・1 その日の夜 航大のモノになると決めたのはいいけど…… ここからどうしたら……? 「あの……航大?」 「ん?何?」 「………その……結婚………するんだけどね……?」 「……俺とお前が、だよな?」 「え?あ、うん。そうだね」 「ごめん。でも、そこを確認しないと、他の男とお前を想像してどうにかなりそうで……」 そう言いながら私の首元にキスを落とす航大。 「んで、結婚するけど何?」 「あの…ね?」 「うん」 「………その……まだ……その………ソウイウコトをする覚悟が……その……」 「………ああ………なるほどな」 「えっと、とりあえず今日はここに泊まるんだよね?なら、私は別の部屋を…」 「歩夢」 私の言葉を遮るように彼が言う。 「………な…に?」 「お前がいいって言うまで、俺はお前に何もしない(………たぶん、な)」 何もしない………? 「え?」 「とりあえず今日は何もしないから。この部屋で一緒に寝るぞ」 「…………え?本当に……?」 「うん。しない(……たぶん)」 「航大は…いいの……?」 「お前と離れて寝るくらいなら、我慢する方がマシ」 「……………」 「……大丈夫だ。まずは一緒に寝ることから慣れよう、歩夢。つーか、ガキの頃ならよく一緒に寝ただろ」 そう言いながら私の頭を優しく撫でてくれる大きくてあたたかい手。 「……それって、小学校入学前までの話だよね?」 「そうだな」 「男の人って…よくわかんないけど大変なんじゃないの?」 「お前はそんな事、気にしなくていい。その代わり、早く俺を異性の男として好きになれ」 国宝級のその顔で見つめられて、思わず視線を逸らす。 ドクン…ドクン…っと騒ぐ心臓。 異性として航大を好きになる日は、そう遠くないような気がしていた。 おまけ・1 その日の夜 END おまけ・2 帰宅………? 「………え?どういうこと?」 そう言いながら、航大を見上げる。 家に帰ると、私の家が……無かった。 いや。 それだと言い方が物騒だったかもしれない。 決して火災などにより住む場所を失ったわけではない。 単に私が借りていたはずのアパートの部屋に戻ってくると、そこには既に別の住人が居たのだ。 あれぇ? 家賃、ちゃんと払ってたのに……? どうして? 強制退去させられてしまったのだろうか……? 「お前が逃亡している間に、お前の家にあったもの全部、俺の家に運んでおいた。これからお前の家は俺の家になるから」 そう言うと笑う航大。 「………え?……えええ!?なん……え!?」 「ほら、鍵。二度と俺に突き返したりすんなよ」 あの日、彼の家のポストに入れたはずの鍵が手渡される。 航大の家に荷物を全部運んだ…? そういえば、彼に捕まったあの日。 彼が引っ越しがどうとか言っていた事を思い出す。 誰の引越しかと思いきや、私のかっ!!!! てっきり、お友達の引っ越しの手伝いでもしていたのかと……。 「言っただろ、歩夢。捕まえたら絶対に逃がさねぇって」 その瞳から光を消して、彼が言う。 言って……いたけど…… さすがにこんな事をするとは思って無かったなぁ……? 「まあ、安心しろよ。お前がいいって言うまでは手を出さないだから」 「………………ですか?」 思わず敬語で問いかける。 「だ。でもまあ、コレだけ我慢してきたんだ。いつ爆発するかは俺にもわからねぇから、そうなる事は覚悟はしておけよ」 そう言うと笑う航大。 彼のモノになると決めたのだ。 ソウイウコトをする日も来るのだろう。 まだ待ってくれるつもりでいるようだけれど。 それは今日までなのか、明日までなのか。 まだまだずっと先なのか、彼にもわからないらしい。 できればもう少しだけ待ってくれると嬉しいな……っと、叶わないかもしれない願いを小さな声で呟いた。 おまけ・2 END おまけ・3 婚約指輪 「……いや、嘘じゃん?」 そう言いながら、後ろを振り返る。 ノートパソコンで何か作業をしていたらしい彼がチラリと私へ視線を向けた。 「あん?何が?」 いや。 何がって…… 「何って、こっちのセリフなんだけど」 「はあ?だから、何の話だ」 「いや、コレ!!」 そう言いながら、テーブルの上にある指輪たちを指差す。 私の目の前にあるのは、20種類以上の指輪。 なんと、これは全て婚約指輪だと言い出した。 いや。 何を言ってるのかわからない。 「あ?何だよ、全部気に入らねぇか?なら一緒に買いに行くか?俺、今日は午後からなら都合つくけど」 っと続ける航大。 違う違う違う!!! そうじゃない!! 「いや、違うよ!!多すぎるんだよ!!!え?普通、婚約指輪って一個じゃないの!?」 「普通なんて知らねぇよ。俺はお前に渡したいと思った指輪を全部買っただけだ」 普通、そんな事する!? いや、絶対しない!! っていうか、きっと出来ない!!! だってこの指輪、全部で総額いくらなの…!? 考えるのも怖い…… 「………ねえ、航大。これ、返してきて」 「やっぱ気にいらねぇか?」 「そうじゃなくて。こんなに付けられないから!!私の指の数よりあるんだよ!?全部の指につけても余るっておかしいでしょう!!」 「は?婚約指輪だぞ。左手の薬指にだけつけろ。他の指にも欲しいなら買ってやるから」 「いらないから!!お願い!大切にするから一個だけがいい!!……えっと…コレ!!!うん!コレが気に入った!!だから他の指輪は全部返してきて!!」 正直、どれが気に入ったとかもわからない。 全部可愛いから、どれだって良かった。 一個になるなら、なんだってよかった。 「…………大切…………一個だけがいい…………ふーん……わかった」 翌日。 婚約指輪は一つだけを残して家の中から残りの指輪は全て消えていた。 よくわからないけれど、どうやら理解してくれたらしい。 おまけ・3 婚約指輪 END おまけ・4 純情な男心 すぐ近くで、知らない人に声をかけられたような気がした。 でも気のせいだろう。 いつもそうなのだ。 知らない人に声をかけられたような気がして振り返ると、そこに居るのは知らない誰かではなく航大なのだ。 ゆっくりと後ろを振り返る。 すると予想通り、そこには航大がいた。 背の高い彼が、私に背を向けて立っている。 誰かと話しているのだろうか? 彼の身体が大きいせいで、彼の向こうに誰がいるのかはわからない。 何だろう? 誰かとお話ししているのだろうか? しばらくすると、彼がくるりと私の方へ振り返った。 「テメェ……来るのが早いんだよ」 不機嫌そうにそう言いながら私の頬を軽く引っ張る航大。 「……ぬぁ……にするのぉ……」 やめてよーっと言いながら彼の手を掴む。 「俺より早く来んなよ……(すぐにナンパされそうになるんだから)」 今度から俺が家まで迎えに行くっつってんのに。お前、俺の話を聞きやしねぇし…っと呟く航大。 私が早く来ると迷惑だったのだろうか…? でもなぁ…… 「……だって、航大と出かけるのが楽しみだったんだもん」 少し声のトーンを落としてそう言うと、不機嫌そうだった航大の様子が急に変わった。 「………俺と出かけるのが……そんなに楽しみだったのか……?」 「うん!それはもう!!」 彼の言葉に大きく頷くと、ぱぁああっと嬉しそうな顔をする航大。 だってだってだって!!! 今日は航大と映画を観に行く約束をしていたのだ。 映画は某有名ゲーム、初の劇場版アニメだ。 実はゲームでひっそりと推しているキャラクターがいて、その子をアニメで観るのをずっと楽しみにしていたのだ。 ちなみにその子の名前は『モタロウ』といい、フクロウをモチーフにしたまんまるで可愛らしいキャラクターだ。 映画館には、初のモタロウグッズも発売されると聞いている。 可愛いあの子に会えるのが楽しみで楽しみで。 正直、昨日は全然眠れなかった。 「………お前が昨日、なかなか寝付けなかったのって………俺と出かけるのが楽しみだったからなのか……?」 私から視線を逸らして、少し照れたような顔をして航大が言う。 あれ? 私が寝付けなかったのを知ってたんだ? 「うん!だって(映画でモタロウに会えるのが)楽しみすぎて、全然眠くならなかったんだもん!」 そう言って私が笑うと、パッと自身の口元を隠す航大。 ん………? どうしたんだろう。 航大の顔が赤いような……? 何だろう。 彼のその目が少し潤んでいて、どこか泣きそうな顔に見えるのは気のせいだろうか? うーん…ちょっと充血しているようにも見える。 「航大、大丈夫?体調悪い?無理しなくてもいいよ。帰る?」 映画は公開されたばかりだ。 また一緒に来るチャンスはいくらでもあるだろう。 それよりも航大の体調が心配だ。 あの日…… 彼の前から居なくなった私を迎えに来てくれたあの日。 私を迎えに来るために、彼はものすごい量の仕事を終わらせたらしい。 それはあとから、彼の友人から聞いた事だった。 無理をしたのだろう。 今日だって、本当なら私と一緒に映画を観に来ている場合では無かったのかもしれない。 「…………クソッ………純情な男心のわからねぇ女だな………」 「……え?航大、いま何か言った?ちょっとよく聞こえなくて…」 「……別に。俺の体調は悪くない。行くぞ」 そう言いながら私の肩に腕を回す航大。 「え?本当にいいの?」 「お前が楽しみにしてた以上に、俺もお前と出かけるのが楽しみだったんだ」 どこか照れたような顔をして彼が言う。 なるほど。 航大も映画が楽しみだったのか。 そっか。 じゃあ、一緒に楽しまなきゃだよね。 私の肩にあった彼の手をぎゅっと握る。 「じゃあ、早く行こう!航大!!」 そう言って彼を見上げて笑うと、握っていた彼の手をひいて走り出す。 どこか嬉しそうな顔をした彼と一緒に映画館まで走り続けた。 「はあ!?映画にモタロウが出るのが楽しみだったって事かよ!?」 不機嫌そうにそう言ったのは、航大だった。 「え?うん。航大も誰か好きなキャラクターがいるんだっけ?」 だから航大も映画を楽しみにしてたんだよね? 航大もモタロウだと嬉しいんだけどなぁ。 でも、この映画には他にも可愛かったりかっこよかったりするキャラがたくさんいる。 誰を好きと言われても納得できる事だろう。 「……………どこまでも俺の心を振り回しやがって…」 航大の心を振り回す? 「おい、歩夢」 少しムッとした表情の彼に見下ろされる。 「なぁに?航大」 「…………まあ、せいぜい覚悟しろよ」 そう言ったかと思うと彼の綺麗な顔が目の前に…… ー いつか必ず、お前の心も手に入れてやるからな ー おまけ・4 純情な男心 END
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