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でも、それでもいいかもしれないと、スローモーションのような景色を見ながら考えた。
ここで死んだらこの底知れぬ恐怖から、
怯えから、救われるかもしれないと。
そう考えた刹那、
女性に飛びかかる一つの影。
ハインが女性と取っ組み合い、拘束しようとしていたのだ。
ノッツはそれを呆然と見つめて、ハインの泣きそうな声で我に帰った。
『ごめん。やっちゃった。どうしよう。』
今まで見せたことのない焦燥に駆られた、動揺しているような、そんな顔でそう言った。
彼の足元には血まりができていて、取っ組み合いによって刺したのだろう、女性の体にはいくつもの刺し傷と腹に包丁が刺さっていた。
ノッツは状況を理解しようと頭を働かせて、それで何が起こったのか分かった瞬間、返り血がつくのも構わずに、
空も、地面も、視界の全てが赤に染まる中、ノッツはハインを抱きしめた。
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