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9.祈り
美咲は大きく深呼吸をして、颯真が用意した椅子に座る。
「ああ、なんだかドキドキします」
「では、美咲さん。今から博子さんをこちらに呼びます。見ることはできませんが、感じることはできると思います。博子さんからのメッセージは私が代わりにお伝えします」
「……はい」
颯真は美咲の前に立ち、博子のペンダントを手のひらに乗せる。目を閉じた颯真が念じると、柔らかい光がペンダントからあふれ出た。すると、颯真の隣に霊体の博子が現れた。
博子は手で口を覆い、涙を浮かべて美咲を見つめている。
「美咲? 美咲なのね?」
颯真によって発された声は、博子の声だった。
その声を聞いた美咲は、驚いて目をパチパチと瞬かせた。
「お……母さん?」
「ごめんなさい美咲。あなたを独りぼっちにしてしまって、ずっと心配していたの」
「本当に?」
「美咲は小さかったから私のことなんて覚えていないかもしれないわね」
「……うん、記憶はあまりないけど、ペンダントがあったからお母さんのことはいつも想ってた」
「嬉しい。ペンダントは、美咲の三歳の誕生日に特別に作ってもらったものなのよ。私、あなたが母子家庭だという理由で心苦しい思いをするかもしれないと思って、このペンダントに祈りを込めたの」
「祈り?」
「表に刻まれている花、わかるかしら?」
「……スズラン?」
「そう、スズランの花言葉は――」
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