第二章 鎮魂曲

23/148
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/470ページ
 そんなことをぼんやり考えながら、ユノーは再び地図に視線を戻した。  完全に参謀長の口を封じることに成功した司令官が、作戦と各隊への進路を告げ始めたからだ。 「……最後に、残り二千が側面の山間から敵軍を突く。これで大方、敵の戦意は喪失するだろう。正面から一足先にぶつかる先方隊を……」  緊張のあまり上の空になっているユノーの耳を、次々と各隊への命令が通り抜けていく。 「……して、司令官殿はいずれの指揮を執られるおつもりです? よもや後ろで何もせずに……」 「俺は最後の二千を持つ。参謀長殿にも是非ご同行していただきたい。何しろ俺は家柄もない若輩者だから、何かと然るべき方の助言が必要だ」  言いながらシーリアスは冷たい笑みを浮かべてみせた。  流石の参謀長もこう下手に出られては不本意ではあるがうなずかざるを得ない。  全ての配置と攻撃内容が決定し、一同は一斉に立ち上がる。  そして散会しようというその時、司令官の口から何の前触れもなく聞き慣れぬ言葉が発せられた。  あれは一体……。  首をかしげるユノーの脇を、ぞろぞろと列席者達は通り過ぎていく。
/470ページ

最初のコメントを投稿しよう!