第一部 第一章 蒼い涙 

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 そしてボクも、その時初めて彼の顔を真正面から見ることができた。  歳の頃は十二、三くらいだろうか、どちらかと言えば小柄な少年は、その夜空の色をした瞳でまじまじとボクを見つめてくる。  何か、文句でもある?  ボクは再び鳴いた。  瞬間、何の前触れも無く、少年はしゃがみこみ、ボクと視線を合わせてきた。  彼の濡れたセピア色の髪から、水滴がボクにこぼれ落ちてくる。  だから、迷惑なんだってば。  その場から離れようとした時、ボクの耳に、彼の声が飛び込んできた。 「……君も、一人なの?」  その声に、ボクは立ち上がるのをやめた。  そして、改めて彼を見やる。  質素ではあるが清潔な服を着ているので、『宿無し子』ではないだろう。  腰には何故か、年齢にはそぐわない短剣を差している。  けれど、それ以上に違和感を感じたのは、彼の『声』だった。  抑揚がなく、一本調子の……そう、感情が無い声。  首をかしげるボクに、彼は手を伸ばしてきた。  濡れて冷えきった手が、ボクの頭を撫でる。 「俺も、一人なんだ」  濡れた手が、頭から背に伸びる。優しく、ゆっくりと。
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