第二章 鎮魂曲

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「直接バドリナードを陥とそう、という訳か。確かにそれが一番手っ取り早いか」  面白くなさそうに言う司令官に、参謀長は顔を真っ赤にして怒鳴った。 「そのように悠長なことを言っている場合ではありません! 一刻も早く物騒なエドナの逆賊共を……」 「見る限り、相手の補給線はぎりぎりの所まで伸びている。周囲の村を二つ三つおさえれば、勝手に自滅してくれるだろう」 「しかし、それでは時間がかかりすぎます! 陛下よりお預かりした貴重な兵員を、長期間危険にさらすような愚かな策は……」  立ち上がり、さらに激高する参謀長。  だが、司令官は眉一つ動かさない。 「確かに参謀長殿の言葉にも一理ある。だが、一人でも多くお預かりした兵員を無傷でお返しするのも、俺に科せられた義務だと思うが」  鋭い藍色の瞳を向けられて、流石の参謀長も黙り込む。  その様子に失笑が漏れた。  ユノーは呆れながらも視線を地図から上座へと移した。  自分とさして歳の変わらない司令官は臆することなく、自分より年長且つ身分も上である参謀長をからかっているのだから。  器が違うな。
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