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第一部 第一章 蒼い涙
─1─出会い
突然降りだした激しい雨に、ボクはあわてて商店の軒先に駆け込んだ。
ふるふると身震いして水を払い落とすと、ボクは丁寧に毛繕いを始めた。
いつからこの街にいたのかなんて、覚えていない。
物心ついた頃には、ネズミや鳥を狩ったり、ゴミ箱をあさったりして毎日を食いつないできた。
時には魚屋の商品に手を出して、店の主人にどやされることもあるけれど、街の人々は比較的ボクらには友好的だった。
そう、ボクは野良猫。
帰る場所のない根なし草。
さて、今日は一体どこで雨露をしのごうか。
相変わらず降り続ける雨を眺めながら、ボクは思案し首をかしげる。
ちょうどその時だった。
前触れもなく、ボクが居座る軒先に、一人の少年が駆け込んできた。
どのくらい走ってきたのだろうか、頭の先から爪先までびっしょりと濡れた少年は、まるでボクらのようにぶるぶると頭をふる。
同時にせっかく乾きかけたボクの体に、飛沫が飛んできた。
いい迷惑だ。
そう伝えるため、ボクは一声鳴いた。
それでようやく少年は、ボクの存在に気が付いたらしい。
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