第一部 第一章 蒼い涙 

1/48
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/470ページ

第一部 第一章 蒼い涙 

     ─1─出会い  突然降りだした激しい雨に、ボクはあわてて商店の軒先に駆け込んだ。  ふるふると身震いして水を払い落とすと、ボクは丁寧に毛繕いを始めた。  いつからこの街にいたのかなんて、覚えていない。  物心ついた頃には、ネズミや鳥を狩ったり、ゴミ箱をあさったりして毎日を食いつないできた。  時には魚屋の商品に手を出して、店の主人にどやされることもあるけれど、街の人々は比較的ボクらには友好的だった。  そう、ボクは野良猫。  帰る場所のない根なし草。  さて、今日は一体どこで雨露をしのごうか。  相変わらず降り続ける雨を眺めながら、ボクは思案し首をかしげる。  ちょうどその時だった。  前触れもなく、ボクが居座る軒先に、一人の少年が駆け込んできた。  どのくらい走ってきたのだろうか、頭の先から爪先までびっしょりと濡れた少年は、まるでボクらのようにぶるぶると頭をふる。  同時にせっかく乾きかけたボクの体に、飛沫が飛んできた。  いい迷惑だ。  そう伝えるため、ボクは一声鳴いた。  それでようやく少年は、ボクの存在に気が付いたらしい。
/470ページ

最初のコメントを投稿しよう!