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家も本人も無害そうという理由で、王子妃候補になりました
「このようにもてなしてくださらなくても良かったのだが」
ユイブルグ家の古く広い食堂で、宰相アルベルトはそう言った。
領地で手に入る最上級の羊肉。
村一番の職人が程よく熟成させて持ち込んだそれを、この館一番の料理人が良質なスパイスを使って焼き上げた。
その羊肉をメインとした、豪華ではないかもしれないが、愛情を込めた手の込んだ料理の数々。
長いテーブルに並ぶそれらを前に、宰相アルベルトは渋い顔をしていた。
父親の後を継いで宰相となった彼は、まだ若く美しかったが。
王家のためだけに動く彼は他の貴族たちには容赦がなく。
あまり評判はよろしくなかった。
ただ、王の忠臣であるこのユイブルグ家では、アルベルトを好ましく思っているので。
うちなんぞになんの用があるんだろうな、と思いながらも、彼を大歓迎した。
「私はちょっとした報告をしに来ただけなので」
そう言うアルベルトをユイブルグ家の二番目の娘、マレーヌはうっとりと眺めていた。
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