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「そんな奴らの言動に、サトルが縛られることない」  中庭で返事をしたときと同じように、サトルは真っ赤な顔で目を白黒させている。あの日からずっと、自分の気持ちがわからなかった。だけど今のわたしは、彼の気持ちがわからなくなるのがとても怖い。 「ハグ、しよ」  わたしがそう言うと、サトルはびっくり仰天という声を上げた。 「嫌なの?」  サトルはぶんぶんと首を横に振る。 「そんなわけない!」 「じゃあ、ほら」  重ねていた手を解き、両手を広げて見せる。サトルは落ち着きなく視線をさまよわせていたが、やがて覚悟を決めたようにまっすぐわたしを見つめた。おそるおそるという感じで体が近づいてくる。  その手は、まるで陶器を扱うかのように優しくわたしの背中に触れた。一瞬震えてしまったのが恥ずかしくて強く抱き返すと、サトルの腕にも少しずつ力が入る。体と体がくっついて、彼の匂いと体温が伝わってくる。無我夢中で走っていたときと同じくらい、心臓が高鳴っている。  なんだ、わたし、こんなにもドキドキするんじゃないか。  心が軽くなりすぎて、どこかへ飛んで行ってしまいそうだ。わたしはしがみつくように、サトルの体をもう一度強く抱きしめた。
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