ポケットの中のプレゼント

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ポケットの中のプレゼント

 吸い込むと肺が凍てつくような、冷たい空気に満たされた冬のある寒い日、人気(ひとけ)のない夜の公園のベンチで俺は彼女が来るのをじっと待っていた……。  彼女は、このプレゼントを喜んでくれるだろうか?  俺はコートのポケットに右手をさし入れると、彼女のために用意したプレゼントをぎゅっと握りしめる。  やはり、二人の運命を左右する一大事に緊張は隠せないみたいである。  ある一大決心をした俺は、今日、このプレゼントを渡すために、告白をした思い出のこの公園へと彼女を呼び出したのだ。 「お待たせ〜! ごめん、待った? ちょっと用事ができちゃってさ」  やがて、約束の時間を少し遅れてから彼女が小走りにやって来る。まあ、時間にルーズなのはいつものことだ。 「いや、今来たとこだよ。こっちこそ急に呼び出してすまなかったね」  俺はそう言うと、微笑みを浮かべて冷たいベンチから腰をあげる。 「そういえば、ここって初めてのデートで告白してくれた公園だよね? 懐かしいなあ……」  俺の方へ歩み寄りながら、彼女は誰もいない公園内をぐるっと見回し、感慨深げにそう呟く。 「憶えててくれたんだね? 嬉しいよ」 「もちろんだよ。わたし達にとって大切な場所だもん……それで、大事な話って何?」  俺の言葉に笑みを浮かべてそう返すと、彼女も幾分緊張しているような様子で、何かを期待しているかの如く上目遣いに尋ねてくる。  たぶん、大丈夫だとは思うけど、このサプライズ、気づいかれていなければ良いのだが……。 「じつは、プレゼントしたいものがあるんだ。ちょっと目を瞑っててくれる?」  俺も彼女の前へ歩み寄ると悪戯っぽい笑顔を作り、そう頼みごとをするかのように彼女へ語りかけた。 「え! プレゼント! なになに!?」  その言葉に彼女はパッと顔色を明るくすると、子供みたいに無邪気にはしゃいでみせる。
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