*三つの家*

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 むかしむかし、飛鳥(あすか)に都があったころの話です。  とある家に、母と三人の兄弟が暮していました。ある日、母が言いました。 「この家は、もうみんなで住むには狭くなってしまった。独り立ちして、仕事に励みなさい」  兄弟は、それぞれ自分の家を建てることにしました。  長男は、煉瓦(れんが)の家を建てました。彼は自慢気に言いました。 「見ろよ、この厚い壁を。狼に襲われても、へっちゃらだ」  次男は、木の家を建てました。彼は得意気に言いました。 「どうだ、この太い(はり)は。野分(のわき)が吹いたって、びくともしない」  三男は、草の家を建てました。地面に穴を掘って屋根をかぶせただけの、簡単なつくりです。長男と次男は笑いました。 「なんて遅れた家だろう。獣が来たら、喰われてしまうぞ」 「兄上の言う通りだ。嵐が来たら、吹き飛ばされるに決まっている」  恥しがらずに、三男は言いました。 「昔ながらの家も、よいものだよ。二人も草の家に住もう。痛い目に遭っても、知らないぞ」  けれど、長男と次男は知らんぷりをしてしまいました。
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