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退屈しないように考えてくれたのか、どこまでも優しい瑞希に涙が出そうだ。
「今日は部活は?」
「僕もテスト前だからないんだ」
「テスト前の勉強で忙しい時にごめんね」
「由奈ちゃんが謝ることはなにもないよ。僕が来たくて来たんだ。顔を見て安心できて良かった」
「本当にありがとう」
「あっ、あとこれ」
瑞希が差し出したのは一冊の文庫本だった。
「これは?」
「僕のおすすめの本。主人公が中学生のカップルで、友達の濡れ衣をはらすために奮闘する話なんだ。由奈ちゃんはスマホを持っているし退屈はしないだろうけれど、本を読むのもいいかな?と思って。僕が勝手に持ってきただけだから、無理しなくていいからね」
スマホを持たない瑞希らしい。夏休みの宿題の感想文のために本を読んだけれど、普段はあまり本を読むことはない。入院中、スマホばかり触っているのもどうかと思っていた。かといって、勉強ばかりでは息が詰まる。
手のひらサイズの文庫本は、スマホとは違った世界が広がっているのだろう。
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